ヨーロピアン・サイン sign style

鈴木清安　著

はじめに　より

　ヨーロッパの街並の風景に思いを馳せたとき、真っ先に目に浮かぶのは、石畳の細い路地にひしめく古いレンガ造りの建物の軒先に掲げられているロマンチックな看板たちでしょう。それらの看板は街並にとてもよくなじみ、独特の西洋風な情緒を醸し出し、道行く人々の目を楽しませてくれています。レトロなものもあれば現代的なセンスのものもあり、それらが上手く融合して違和感なく街の風景を作りだしています。そのバラエティーに富んだデザイン性の豊かさとアート感覚に、私たちは魅きつけられます。まさに看板たちは有機的に組み合わされたデザインの宝庫ともいえます。芸術家たちが好んでヨーロッパを訪れる訳もこの辺にあるのかもしれません。

　かねてから、私もヨーロッパの看板の美しさとデザイン性には注目しており、日頃のデザインワークに取り入れることが出来たら、どれだけすばらしいことだろうと考えていました。本書では、私なりにイメージするヨーロッパの看板をモチーフにしたオリジナルデザインを収録してあります。必ずしも本場のデザインと一致する訳ではありませんが、ヨーロッパの空気を僅かでも感じていただければ幸いです。また、本書を通して読者の皆様のアイデアやインスピレーションのきっかけを作り、すばらしいデザインを生み出す一助となれることを願っております。

2010年5月　鈴木清安